「傷病手当金は、病気休職に入る4か月目からもらえる」
教員の間で、なんとなくそう理解している方は多いのではないでしょうか。
実はこの理解、半分正解で半分誤解です。
僕自身、病気休暇と病気休職の仕組みについて調べ、以前の記事で「①病気休暇(90日・給与10割)→②病気休職(8割)→③傷病手当金(3分の2)」という3段階の流れを紹介しました。
この記事を書いた当初は「これで制度は理解できた」と思っていたのですが、あらためて傷病手当金だけにフォーカスして調べ直してみると、、、
- 支給の始まるタイミング
- 金額の計算
- 申請の手続き
- 退職後の扱い
まで、意外と誤解しやすいポイントがいくつもあることに気づきました。
今回は「傷病手当金」だけにテーマを絞り、支給開始の本当のタイミングから、実際にいくらもらえるのか、申請書の出し方、退職後はどうなるのかまで、できるだけ正確に整理していきます。
今まさに休むかどうか迷っている先生、これから長期の休職に入るかもしれない先生の、判断材料の一つになれば嬉しいです。
「傷病手当金は4か月目から」本当にそうでしょうか?

病気休暇→病気休職→傷病手当金という3段階の流れ
教員の場合、病気で長期に休むことになったとき、お金の面ではおおまかに次の3段階を経ることになります。
- 第1段階:病気休暇(最長90日)給与は10割支給
- 第2段階:病気休職(給与8割)
- 第3段階:傷病手当金(給与のおよそ3分の2水準)
この流れだけを見ると、90日の病気休暇が終わり、病気休職に切り替わる4か月目から傷病手当金がもらえる、と考えてしまいがちです。
しかし、実際にはそう単純ではありません。
僕自身は傷病手当金を受け取ったことがありません

僕は病気休暇を1ヶ月、2ヶ月と取ったことはありますが、90日を超えたことはなく、実は傷病手当金を受け取った経験はありません。
だからこそ当時、
「もし長引いたらどうなるんだろう」
という漠然とした不安がありました。今回はその「もし」の部分を、できるだけ正確に整理しておきたいと思います。
「4か月目から支給開始」が誤解を生みやすい理由
受給権は4日目に発生するが、実際に振り込まれるとは限らない
傷病手当金は、療養のため連続して勤務できなくなった日から4日目に受給権が発生します。これ自体は事実です。
ただし、実際にお金が振り込まれるのは、あくまで傷病手当金の給付日額が、その時点でもらっている給与の日額を上回った場合だけです。受給権があることと、実際に振り込まれることは、別の話なのです。
なぜ8割の給与の方が多くなるのか
90日の病気休暇が終わり、4か月目から病気休職に切り替わると、給与は8割になります。一方、傷病手当金はおおよそ給与の3分の2に相当する水準で計算されます。
つまり多くの場合
8割の給与 > 傷病手当金の水準
という関係になり、4か月目に入っても実際には1円も振り込まれない、というのが実態です。
多くの先生にとって、傷病手当金が家計の主役になるのは、90日の病気休暇+1年間の病気休職(8割)が終わり、給与が完全にゼロになったタイミングからです。休み始めてから通算すると、およそ1年3か月後というイメージになります。
それでも「4か月目から」もらえる人がいる、という例外
2015年の制度改正で変わったこと
ここが今回いちばんお伝えしたいポイントです。
2015年10月、共済組合の給付制度が標準報酬制に変わったことで、病気休職中(8割支給中)でも傷病手当金の一部が支給されるケースが出てきました。
条件は、標準報酬月額(給料に管理職手当や扶養手当なども含めた金額)が高いこと。
標準報酬月額が高い先生ほど、本来の傷病手当金の水準も高くなるため、8割の給与を上回ってしまい、その差額分だけ傷病手当金として支給されることがあります。
管理職・勤続年数が長い先生ほど当てはまりやすい理由
つまり「4か月目からもらえるかどうか」は、休職前の給与水準によって分かれる、というのが正確な答えです。
管理職の先生や、勤続年数が長く昇給している先生は、若手の先生よりもこのケースに当てはまりやすくなります。
実際いくらもらえる?計算式とモデルケース

教員の傷病手当金の計算式(共済組合は「22」で割る)
教員が加入する公立学校共済組合の傷病手当金は、会社員が加入する協会けんぽとは分母が異なります。
直近12か月間の標準報酬月額の平均額 ÷ 22 × 3分の2
(協会けんぽは「30」で割りますが、共済組合は月の勤務日数に近い「22」で割るため、同じ月収でも日額はやや高めに出ます)
モデルケース:標準報酬月額36万円の場合
試算例として、標準報酬月額の平均が36万円の場合を見てみます。
・36万円 ÷ 22 ≒ 16,364円(日額)
・16,364円 × 3分の2 ≒ 約10,909円/日
・30日換算で 月額 約32.7万円相当
採用1〜2年目で長期休職した場合の注意点
共済組合の加入期間が12か月に満たない場合(採用1〜2年目など)は、この平均額と共済組合全体の平均標準報酬月額のどちらか低い方が基礎になります。
若手のうちに長期化すると、想定より少なくなる可能性があるので覚えておいてください。
もらえる期間は、実は「2年」ある

基本給付1年6か月+付加給付6か月の内訳
傷病手当金の基本給付は、支給開始から通算1年6か月ですが、実はこれで終わりではありません。
在職中であれば、続けて付加給付としてさらに6か月分が上乗せされます。
基本給付1年6か月 + 付加給付6か月 = 最長2年間
この2年間が、無給期間の生活を支える上限だと考えておくと安心です。

2年間は無給になることはないと思うと安心ですよね!
療養に集中できます。
ただし、退職した後にこの給付を引き継ぐ場合、付加給付の対象外になる点には注意してください。
詳しくは後ほど「退職後の傷病手当金」の章で説明します。
傷病手当金の申請方法・申請書の提出手順
申請書はどこでもらう?誰に相談すればいい?
傷病手当金は自動的に振り込まれるわけではなく、毎月自分で(あるいは家族が代理で)請求書を提出する必要があります。
申請書の様式は、加入している共済組合支部の窓口やホームページから入手できるほか、勤務校の事務担当や管理職を通じて取り寄せられることが一般的です。
医師の証明欄が必要になるため、主治医への記入依頼も忘れずに行いましょう。

体調が悪い中で自分だけで手続きを進めるのは負担が大きいので、早めに管理職や事務担当、家族に相談し、申請の流れを一緒に確認しておくと安心です。
毎月10日の締切と24日払いのサイクル
申請書の提出には締切があります。
- 請求書の提出締切:毎月10日
- 10日までに受理された場合 → 当月24日に支給
- 10日を過ぎた場合 → 翌月扱いになり、支給も翌月にずれる
体調が悪いときにこの締切を意識するのはなかなか大変です。事前に共済組合の窓口や管理職・事務担当に相談しておくと、スケジュールの見通しが立てやすくなります。
退職後の傷病手当金はどうなる?

退職後も引き継げる条件
長期の休職の末に、療養に専念するために退職を選ぶ先生もいらっしゃいます。その場合でも、一定の条件を満たせば、退職後も傷病手当金を引き続き受け取ることができます。
主な条件は、退職日までに継続して1年以上共済組合の組合員であったこと、そして退職日に現に傷病手当金を受けている(または受けられる状態にある)ことです。
この条件を満たしていれば、退職後も残りの支給期間分は継続して受給できます。
退職すると付加給付が対象外になる点に注意
一方で、注意しておきたい点もあります。在職中であれば上乗せされる付加給付(プラス6か月分)は、退職後は対象外になります。
つまり、退職後にもらえるのは基本給付の1年6か月の範囲内のみとなり、在職中に受け取れる最長2年間よりも、支給される期間が短くなる可能性があります。
退職のタイミングを検討する際は、この違いも踏まえておくと安心です。
東京都をはじめ、自治体によって運用が異なる点に注意
最終的には共済組合支部・服務担当への確認を
ここまで紹介してきた病気休暇・病気休職の日数や支給割合、傷病手当金の細かい運用は、勤務している自治体(都道府県・政令指定都市など)の条例によって差があります。
東京都の教員の場合も、基本的な制度の枠組みは全国共通の公立学校共済組合の仕組みに沿っていますが、病気休暇の運用細則や、休職に関する手続きの窓口対応などは、東京都独自のルールが定められている部分もあります。
この記事は一般的な枠組みを整理したものですので、最終的にはご自身が加入している共済組合支部や、勤務校の服務担当への確認をおすすめします。
混同しやすいポイントの整理
公務災害(校務中のケガ・病気)とは別制度
傷病手当金の対象は、私傷病(公務によらない病気・けが)だけです。校務中の事故などは別制度(公務災害補償)になりますので、混同しないよう注意してください。
障害年金・退職年金との調整がある場合も
障害年金や退職(老齢)年金を受けられる場合、その額に応じて傷病手当金が調整されることがあります。また、病気休暇・休職期間中のボーナスの扱いについては、別の記事で詳しく解説しています。
まとめ:知っているだけで、休み始めの不安の質が変わる
- 傷病手当金の受給権は4日目に発生するが、実際の支給は「給与<傷病手当金の水準」になってから
- 多くの先生は、90日の病気休暇+1年の病気休職(8割)が終わってから、本格的に傷病手当金の対象になる
- 標準報酬月額が高い先生は、8割休職中でも差額支給されることがある(2015年の制度改正)
- もらえる期間は基本給付+付加給付で在職中は最長2年、退職後は基本給付の1年6か月まで
- 申請書には毎月10日という締切があるので、早めの相談が安心につながる
- 自治体によって運用に差があるため、最終的な確認は共済組合支部や服務担当へ

制度のことは分からなくても、とりあえず休むという選択でも、教員の福利厚生はしっかり守ってくれます。
それでも、あらかじめ仕組みを知っておくことで、休み始めた瞬間の「お金、大丈夫かな」という不安は、確実に小さくできます。

自分の場合、実際にいくらもらえるのか、退職後の扱いはどうなるのか、まだ不安が残っています。

その不安はとても自然なことだと思います。この記事の内容はあくまで一般的な枠組みです。
ぜひご自身の共済組合支部に、標準報酬月額や退職予定の有無を伝えた上で、具体的な試算をお願いしてみてください。
この記事が、今まさに休むかどうか迷っている先生の、判断材料の一つになればうれしいです。
この記事を含む、適応障害に関する経験を一つにまとめた記事があります。
休職中の過ごし方から復職のタイミングまで、4度の休職経験者のリアルをまとめています。
ぜひ読んでみてください。
▶【完全まとめ】
最後まで読んでいただきありがとうございました!
▶ 日々の気づきや適応障害のリアルな記録はnoteに書いています。
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